インドとオーストラリアのサンダルウッド
固く細長い葉をしています
南インドのマイソール地区の森で発見されたサンダルウッド(Santalum album)は、アーユルヴェーダでは重要な薬剤、ヒンドゥー教では神聖な香りとして、古く長い歴史を共にしてきた植物です。細く固い葉を持ち、横に枝葉を拡げながら、50年近くかけて20メートルほどの高さまで成長します。かつては、貴重な交易品として大きな収入源となっていたため、際限なく伐採されたサンダルウッドは、絶滅危惧種に指定されるほどに数が減ってしまいます。その後、インドの国と州政府が伐採を管理し、植樹が試みられていますが、現在ではオーストラリアに自生するサンダルウッド(Santalum spicata)が、Stainable(持続可能)な原料として市場では活用されています。
日本でも親しまれる、高貴な香り
おが屑のように細かく砕いたものを蒸留していきます
蒸留の際には、木をそのまま蒸留器にいれるのではなく、家具などの製造に活用した木のこまかいおが屑を蒸留所へ運んで釜へといれていきます。アジア文化と深いつながりを持つサンダルウッドですが、日本でも白檀(びゃくだん)と呼ばれ、香道の世界で親しまれる高貴な香料です。まだ香道という言葉が生まれる前、薫物(たきもの)として香りが楽しまれた平安時代にも、練香をつくる香料として使用されていました。独特の静けさを感じる香りは、遠くから頭の芯に呼びかけるように、柔らかな甘さと冷静さで、地に熱を降ろす調和のとれた落ち着きをもたらします。鼻腔を通ったときの当たりの柔らかさからも、呼吸器の炎症がつらい状態や痰が気になる時に最適です。
サンダルウッドの芳香成分
細い枝を持つ木からは、甘い香りが漂います
サンダルウッドの香りは、樹皮を落とした心材(幹の中心部)と根に最も多く保持されていて、とても温和な成分構成です。サンタロールという芳香成分が約50%を占めています。サンタロールは樹齢を増す毎に増えていく成分で、炎症や頭に地がのぼっている状態を鎮静に向けつつバランスをとるようサポートする面と、ダニなどの虫を避ける面を持っています。ベースノートに分類される精油なので、ブレンドの際には20%以下で配合するようにしましょう。ゆっくりと香りが出てくるので、香りが立たないからとすぐに量を増やしてしまうと結果的に想像よりも重くなる可能性があります。1日ほど置いて、再度香りを確かめてから微量ずつ調整していくのがおすすめです。